僕の頭ん中

思いついたことを書きなぐる

社会全体の生産性を上げない限り精神疾患は治らない

井原裕著 「うつの常識、じつは非常識」という本を読みました。

 

この本では現代社会の病理として都市型うつという疾患を定義しています。

Kindle unlimitedでも読めます。

 

高度経済成長期においては働けば働くほど給料は上がるし、日本の経済は発展していくという希望がありました。

 

だから「モーレツ」とか「24時間戦えますか」というキャッチフレーズがはやりました。

 

しかし、バブルは崩壊してただ単に労働時間を増やしても生産性が上がるとは言えない状況が出てきました。

 

一方、そんな社会の変化に気づかない企業はただ年を取った役員だけ異常に発言力があるという年功序列や男性だけで組織の意思決定を行うという家父長制の文化だけは維持し続けました。

 

生産性の低い組織構造を維持してくコストを支払わされるのはいつも立場のより弱い者たちです。

 

ブラック企業という形で従業員から搾取を続けつつ、顧客に還元していくという形で日本企業は存続してきました。

 

そんな企業で働き続け搾取された結果、その中の特にお人好しな人々、自分を顧みず他人のことに尽くそうという気持ちを持った人々から病んでうつになっていくのでした。

 

そこでSSRIの登場です。うつは心の風邪。これを飲むとうつが治るよと言って新薬を処方し続けました。これで製薬会社はいくら儲けたのでしょうか。

 

町中に個人開業のメンタルクリニックも増えました。

 

しかし、薬物療法というのはただの対症療法です。

 

しんどい、会社やめたいという思いを薬でごまかしながら、またブラック企業に搾取されに行く。

 

これでうつが治るはずがありません。

 

著者は健康的な生活習慣、とりわけよい睡眠や運動、断酒が精神的健康を維持すると提唱しています。

 

これはその通りなのですが、なかなか個人の意思だけでこれらの習慣を維持していくのは難しいのではないかというのが私の現時点での所感です。

 

長時間労働の中で運動習慣を身につけるのは容易ではないですし、有給を取らせなかったり微妙な形で労働者の権利を無視している企業が今も多いからです。

 

仕事のストレスの自己治癒としてタバコや飲酒もソシャゲも存在するからです。

 

自分だけの立場が守られれば良いという人々が君臨し続ける限り、これからも社会全体の病理として都市型うつは存在し続けるのではないでしょうか。